21世紀のサボテン栽培法−基礎編
2006.6 誌上発表開始
2007.2.4 公開開始
2.5 水やり開し
2.6 鉢と植え方

初めに
名人の経験と勘を秤と桝に置き換え、初心者でも合理的な栽培法を身につけられ、現地のサボテンの保護にも役立つサボテン栽培法の開拓を目指しています。ここでは、基礎編として、サボテン栽培に係わることを全般的に検討します。まず、サボテン栽培の最も基本になる培養土、次に最も大事な日常の世話である水やり、そして植え方と鉢を改めて見直し、それらに影響する環境対策を考えます。その一方で、害虫対策や、繁殖の基本技術である挿し木、より良く生長させる為の肥料についても検討します。実生や接ぎ木、特別の種類の栽培法などは高度な段階なので改めて検討します。

目標は
(1)腐れ、枯れをなるべく防ぎ、適度に生長する
(2)どの種類や大きさにも大体使える
(3)単純で、数値で表された明確な方法で、実行可能。
従って特別な種類を美しく仕上げることは目標にしていません。


目次
1.培養土・鉢・植え方
2.水やり
3.植え替え・鉢
4.害虫対策
5.株分け・挿し木
6.環境対策
7.肥料
など

1.培養土
人により培養土は千差万別で、自分にあった物はどれかなかなか分かりません。ここでは、培養土の性質を理解し、基本的な構成を考えます。
(1)培養土の性質
培養土を考える際に最も基本的な基準は水やりの観点から出てきます。抽象的に言えば、腐らない為には水はけが良く、枯れない為には水持ちが良いのが望ましい、ということです。
水持ちの基本は、鉢底から溢れるまで水をやったときにどれだけ水を溜められるかで、「最大保水量」と言います。水はけは、単純には乾きやすさと考えられます。これらを良くしたいと材料の種類をあれこれ考えますが、実はこれらの性質は材料の種類よりも粒の大きさの効果の方が大きく、粒の大きさが同じなら種類が違ってもそれほど変わらないのです(会員発表の各種砂・鉢の乾き方参照)。乾きやすさについては含水量の「半減期」で表せることが分かりましたが、後の項で述べます。
一方、水はけと言っても、悪くなるのは実際には鉢の底で、腐りやすいのは根元やその近くの太い根です。鉢の中では、下の方程水の量が多くなっています。そして、鉢の底では、水やり直後は土の粒の間に水が詰まって酸欠状態になります。粒の間の水は、粒が小さい程毛管現象の為に長く止まります。また、表面近くでも、粒が小さい所程湿りが抜けにくいのも毛管現象が関係しています。微塵を抜くと良いと言われるのはこのこととも関係しています。
さて、種類について考えると、赤玉は最大保水量が大きく乾きやすいのに対して、軽石はその反対です。そのため、赤玉と軽石を適当な割合で混ぜた物が適当な性質を持ちます。最大限の生長を狙うとか、できるだけ美しくとかと考えないなら、単純なこの2種の組み合わせに少し肥料を加えるだけで十分栽培できます。


硬質赤玉の粒を篩で1mm幅に揃えた物1-5mm

大きさ3-4mmの拡大図

海底火山の軽石パミスを篩った物

(2)基本培養土
保水量・乾き方・毛管現象を考えると、大きさ2-3mmが中庸を得ています。赤玉と軽石の割合は、現在流行の牡丹類・兜・烏羽玉などの栽培に良く用いられているのは3:1程度と思われますが、これらはいずれも刺が無く体も柔らかい種類です。赤玉は吸湿性があって徒長しやすいと言われています。一般のサボテンには赤玉:軽石=2:1程度に軽石を多くした方が良いようです。なお、軽石を多くすると、刺が太くなる傾向もあります。昔、多稜玉類を軽石だけで植えると刺が良くなると言われたことがありました。これを色々な種類・大きさの苗に基本培養土として用いることができます。



(3)鉢と植え方
当然のことながら、鉢と植え方も、水やりに大きく影響する。
@鉢
鉢は基本として、普及しており、大きさが色々あって、価格も安い、硬質の黒プラスチック鉢を用いる。底穴が広く開いている物がよい。黒は暖まりやすく生長を促進する。プラスチックは空気を通さないので、大きな鉢では酸欠が問題となるが、サボテンは小型の為鉢も小さく、基本培養土も粗粒の為空気は表面から十分はいる。底穴が広く開いていると水はけが良く、土の中の空気も十分に入る上に、底土の湿りなどを見ることができるので水やりの具合を見るのに都合がよい。
鉢の乾き方は大きくなる程遅くなる為、鉢毎に水やりの量や間隔を変えなければならない。しかし、鉢の深さが同じだと乾き方も殆ど同じになることが分かった。一般にサボテンの根は自生地では横に張る為大きくなっても深くなることはない。従って鉢植えでも径が大きくなっても深くする必要はなく、深さを揃えると管理が楽である。硬質のプラスチック鉢は鋏で切ることができるので、上から縁を切って浅くしてしまう。
A植え方
完成苗の鉢植えは、大体底にゴロ土を敷いて、その上に培養土を盛り上げ、根を広げて苗を置いて、培養土を掛け、表面にやや大粒の化粧砂を敷くのが普通と思われている。但し、小苗を小さな鉢に植え育成する場合には、鉢底のゴロ土はなく表面の化粧砂も敷かない。大苗も含めて、育成にはそうするのが良い。ゴロ土は底の水はけを良くする為に敷くのだから、水はけが良ければ不要である。小さい粒の培養土の下に大粒を敷くと、境目の培養土側(小粒)に水が溜まる傾向があり、却ってそこの水はけが悪くなる。また、ゴロ土が無いと培養土が底穴から良く見える為、水やりに都合がよい。
化粧砂があると、矢張り培養土の乾き具合が見えないので都合が悪い。根元を大粒にすると根際の乾きが良くなるが、培養土が粗粒ならそうするまでもない。
従って、鉢底に、培養土が落ちないように網を敷いたら、培養土を置き、苗を置いて、根際まで入れる。
培養土の乾き方は、表面の日当たりと通風にとても影響を受ける。これらを良くするには、土の表面を鉢の縁から余り低くしないことである。むしろ、水やりなどで土がこぼれない範囲ですれすれに近くした方が良いと言える。また、水の蒸発は土の表面の広さに比例する。従って鉢の大きさに対する苗の大きさ、実際には根元の大きさにより乾き方はとても異なってくる。根腐れ重視なら、なるべく「土の開口率」を大きくすることである。以上のことを図に示すと下のようになる。

 


(もっと詳しいことは「カクタス東京」444号参照)